映画『ピアス 刺心』公式サイト

INTRODUCTION
イントロダクション
健気で純度の高い瞳のジージエを瑞々しく演じたのは台湾の若手実力派俳優リウ・シウフー。本作でローマ・アジア映画祭最優秀男優賞を受賞、台北映画賞で最優秀新人男優賞にノミネートされた。そして映画『KANO-1931海の向こうの甲子園』で鮮烈なデビューを果たしたツァオ・ヨウニンが、兄ジーハンの傲慢さと脆さを体現し新境地を見せる。監督・脚本を手がけたのは、短編『Freeze』が70を超える国際映画祭で上映され長編デビューが待ち望まれた若き俊英ネリシア・ロウ。フェンシング代表として活躍し、その後ニューヨークにて映画作りを学んだ異色の経歴をもつロウ監督が、台湾で実際に起きた事件と監督自身の兄との家族関係に着想を得て、フェンシングを題材にした愛と疑念が対立する傑作心理スリラーを生み出した。撮影監督には、『EO イーオー』にて全米映画批評家協会賞など世界の名だたる撮影賞を受賞し最注目のミハウ・ディメクが参加。揺れる感情を緻密に捉えながら、どこか幻想的で洗練された映像に昇華させた。そして、エドワード・ヤン、ホウ・シャオシェン、ウォン・カーウァイらを支えた台湾の重鎮サウンド・デザイナー、ドゥ・ドゥーチーが、愛が変貌し現実が歪んでいく複雑な心理を演出する。
兄は悪魔なのか? 愛は欺瞞なのか?
破滅的な真実の先で、我々はさらなる衝撃に射抜かれる。
STORY
ストーリー
フェンシングの試合中に対戦相手を刺殺し、少年刑務所から7年ぶりに出所した兄ジーハンと、疎遠になっていた弟ジージエが再会する。「事故だ」という兄の言葉を信じて、ジーハンを警戒する母の目を盗み、兄からフェンシングの指導を受ける。ジージエ自身も気づかなかった友人への甘酸っぱい想いを後押ししてもらい、ふたりは兄弟の時間を取り戻していく。しかし、幼き日の溺れた記憶がよぎる。あの時、なぜ兄はすぐに手を差し伸べなかったのか。「僕が死ねばいいと思ってた?」疑念が深まるなか、悪夢のような事件が起こる。
CAST
キャスト
リウ・シウフー
| 劉修甫 |
ジージエ
1997年7月31日台湾・台中市出身。デビュー作「子供はあなたの所有物じゃない」‐第2話「ネコの子」(18)で第54回金鐘奨ミニシリーズ部門の最優秀新人俳優賞にノミネートされる。2021年には台北映画祭の「スーパーノヴァ」賞を受賞した。その後、舞台や映画出演のほか、雑誌や広告のモデルとしても活躍。これまでの主なTVシリーズ出演作は「悪との距離」(19)、「額外旅程 (英題:Bonus Trip)」(22)、「鬼之執行長 (英題:Trick or Love)」(23)、映画出演作に『俺の中の奴ら (原題:複身犯)』(21)、『ウソつきな僕が君を好きなのは』(25)など。本作『ピアス 刺心』で初主演を務め、ローマ・アジア映画祭最優秀男優賞を受賞、同年の第27回台北映画賞で最優秀新人男優賞にノミネートされた。
ツァオ・ヨウニン
| 曹佑寧 |
ジーハン
1994年4月24日台湾・台北市出身。小学生の時から野球を始め、2012年にAAA世界野球選手権のチャイニーズタイペイ代表に選ばれるなど野球選手として活躍する。2013年、映画『KANO-1931海の向こうの甲子園』のエースピッチャー・呉明捷役で俳優デビューを飾り、同作の演技で2014年の台北映画祭で助演男優賞を受賞、第51回金馬奨では最優秀新人俳優賞にノミネートされた。2016年に野球選手を引退し、芸能活動に専念。これまでの主な出演作には、TVシリーズ「人際關係事務所 (英題:Befriend)」(18)、「極道千金 (英題:Triad Princess)」(19)、「華麗計程車行 (英題:A Wonderful Journey)」(24)、映画『可不可以, 你也剛好喜歡我 (英題:Do You Love Me As I Love You)』(20)、『スリングショット』(21)、『夏のレモングラス』(24)などがある。
ディン・ニン
| 丁寧 |
1970年7月4日台湾・彰化県出身。TVドラマ、映画、舞台など幅広く活躍し、『幸福城市』(18)で第55回金馬奨最優秀助演女優賞を受賞。Netflixシリーズ「ふたりの私」(22)では第58回金鐘奨ミニシリーズ部門の最優秀助演女優賞にノミネートされた。その他の主な出演作は映画『GF*BF』(12)、『弱くて強い女たち』(20)、『青春弑恋』(21)、Netflixシリーズ「次の被害者」(24)などがある。
STAFF
スタッフ
監督・脚本
ネリシア・ロウ
| 刘慧伶 |
シンガポールで生まれ育ち、5年間にわたりシンガポールのフェンシング国家代表として活躍する。2010年の広州アジア競技大会を最後に現役を引退し、子どもの頃からの夢だった映画作りの道へ進む。2018年、ニューヨークのコロンビア大学で映画監督専攻のMFA(芸術学修士)を取得。短編2作目の『Freeze』は、2016年のクレルモン=フェラン国際短編映画祭でプレミアされ、その後、金馬奨(台湾)、釜山国際短編映画祭(韓国)、ブリュッセル国際短編映画祭(ベルギー)、オーデンセ国際映画祭(デンマーク)、シンガポール国際映画祭をはじめ世界70以上の映画祭で上映された。
これまでに、シンガポール国際映画祭による東南アジアの若手映画作家を支援するプロジェクト「New Waves: Emerging Voices of Southeast Asia director showcase」(2017年)と「Southeast Asian Film Lab」(2018年)に選出され、2019年にはフランスを拠点とする国際的な映画脚本育成プロジェクト「Less is More」に参加。
長編デビュー作となる本作は、フェンシングを題材に、自閉症の兄との関係から物語の着想を得て制作された。葛藤を抱えた子ども時代を過ごしながらも、家族を深く愛する自身の想いが作品に繰り返し問いを投げかける——「愛とは何か?」
Director’s Note
2014年、私は台北で短編映画の撮影をしていました。そのとき、一人の若者が台北の地下鉄で複数の人を刺すという、社会を震撼させる悲劇が起きました。その若者の両親は公に息子を非難しましたが、弟だけは兄のそばに立ち続け、兄の行為を完全に否認しました。弟のその反応を見て、私は自分の自閉症の兄との関係を思い返さずにはいられませんでした。幼いころ、兄の状態を理解できなかった私は、心の中で兄を愛情深く思いやりのある理想の兄として描いていました。しかし大人になって初めて、私たちの関係は私の頭の中で作り上げた幻想にすぎなかったことに気づきました。この気づきが、私に『ピアス 刺心』を書くきっかけを与えてくれました。
私は兄を深く愛しています。しかし、兄が同じように私を思っているかどうかを知ることは、決してできません。それを受け入れることは痛みを伴う旅でしたが、『ピアス 刺心』の中でジージエが歩む道もまさに同じです。
映画の中でも、現実の生活でも、私が自問する問いは変わりません――真実を知ったとき、人の愛情や忠誠心はどのように揺らぐのでしょうか。そして、真実は本当に重要なのでしょうか。
撮影監督
ミハウ・ディメク
1990年10月1日ポーランド・ワルシャワ出身。アンジェイ・ワイダやクシシュトフ・キェシロフスキを輩出した国立ウッチ映画大学で学ぶ。撮影監督として短編から長編まで多くの映画に参加し、イエジー・スコリモフスキ監督の『EO イーオー』(22)でロサンゼルス映画批評家協会賞 最優秀撮影賞、全米映画批評家協会賞 最優秀撮影賞を受賞した。その他の作品にナタリー・ビアンチェリ監督『Wolf ウルフ』(21)、ジェシー・アイゼンバーグ監督『リアル・ペイン~心の旅~』(24)、マグヌス・フォン・ホーン監督『スウェット』(20)、『ガール・ウィズ・ニードル』(24)などがある。
サウンド・デザイナー
ドゥ・ドゥーチー
| 杜篤之 |
1955年生まれ。1973年に中央電影公司の映画技術研修課程に入学し録音工学を学ぶ。その後は助手を務め、1982年に正式な録音技師に昇進する。以降は特に台湾ニューシネマの監督たちとの仕事で高く評価され、金馬奨(台湾)、金像奨(香港)で度々受賞を果たすなど台湾を代表する録音技師、音響編集者として知られている。ホウ・シャオシェン監督の『ミレニアム・マンボ』(01)では第54回カンヌ映画祭高等技術委員会賞(芸術貢献賞)を受賞した。手掛けた代表作にはホウ・シャオシェン監督の『風櫃の少年』(83)、『恋恋風塵』(86)、『悲情城市』(89)、『戯夢人生』(93)、エドワード・ヤン監督の『恐怖分子』(86)、『牯嶺街少年殺人事件』(91)、『エドワード・ヤンの恋愛時代』(94)、『ヤンヤン 夏の想い出』(00)、ウォン・カーウァイ監督の『ブエノスアイレス』(97)、『花様年華』(00)、『2046』(04)などがある。近年の主な参加作品は『アニタ』(21)、『郷愁鉄路~台湾、こころの旅~』(23)、『黙視録』(24)など多数。2023年にはチャン・ジーアン監督の『五月雪』(23)で自身13度目となる金馬奨最優秀音響効果賞を受賞した。
サウンド・デザイナー
ウー・シュウヤオ
| 呉書瑤 |
国立台湾芸術大学卒業後、ドゥ・ドゥーチーのスタジオで録音アシスタント兼サウンド・エディターとしてキャリアをスタートさせる。ウェイ・ダーション監督の『セデック・バレ』(11)、ホウ・シャオシェン監督の『黒衣の刺客』(15)、ギデンズ・コー監督の『怪怪怪怪物!』(17)、チャン・ジーアン監督の『五月雪』(23)に参加し、4作品とも金馬奨最優秀音響効果賞を受賞した。その他の参加作品にはアン・ホイ監督『明月幾時有』(17)、シルビア・チャン監督『妻の愛、娘の時』(17)、ホアン・シンヤオ監督『大仏+』(17)、チョン・モンホン監督『ひとつの太陽』(19)、『瀑布』(21)など。